「ねえ、セリシア。僕たちは今日から、お互い入れ替わろう」

入れ替わる? とセリシアは訊く。

「僕が〝セリシア〟と名乗り、君が〝ディオン〟と名乗るんだ」

「……どうして?」

「奴らは、君を先に捕まえようとする。もし捕まってしまえば、君はまた、精神世界(こころ)の中に入られる。そんなことが起これば、君は本当に……壊されてしまう」

 セリシアの味方は、たった僕一人。
 だから、僕が必ず、君を守ってみせよう。


「もし奴らに見つかってしまったときは、僕が囮(おとり)になる。そのうちに、君は逃げるんだ」

「でもディオンが……」

「大丈夫。僕も奴らの隙を見て、すぐに逃げるからさ。僕は、セリシアを一人になんかしないよ」

けれど問題がひとつある。
それは二人のオッドアイだ。
ディオンは右目がスカーレットで、セリシアは左目がスカーレット。
互いに対になっているということを、奴らレクスはもちろん知っている。

『君たちが魔力を上手く使いこなせるようになれば、その漆黒の紋章とスカーレットの瞳は隠すことが出来るだろう』

閉じ込められていた部屋から逃がしてくれた、あの男は、確かにそう言っていた。

「魔力を上手く使いこなすまでは、包帯を巻いて、この紋章と瞳を隠そう。魔力で隠すことが出来るようになれば、誰も、僕らが入れ替わっているだなんて気付かないよ」

だって僕らは、双子なんだから、と続けた。