「……アイツらなんて――人間なんて、全員消えてしまえばいいんだ」

掠れた声が、耳に入った。

「…そうだね。人間が消えてしまえば、僕らが苦しむことは、もうないのにね」

そして僕らは、幸せになれるのに、と続けた。

 君から感情を――笑顔を奪ったアイツらが、許せない。

「いっそのこと、僕らが全ての人間を消してあげようか」

「僕らが?」

うん、とディオンは答える。
そして、強くセリシアを抱き締めた。

「この世界から、人間を消す。僕らが生まれたのは、きっとその使命があるからだよ」

「そっか。だから僕たちは、精霊使いとして……そして、人工精霊を受け入れて、生まれてきたんだね」

「うん。十年の時間(トキ)が流れるのを、ひたすら待とう。……この世界に存在する、全ての妖精や人間が敵であろうと、僕だけは、君の味方だからね――」

「…約束だよ?」

「大丈夫。僕は絶対、君を裏切らないよ」

なだめるように、優しく、髪を撫でてあげる。

「全ての人間を消して、僕ら二人だけの世界に――」

 君だけがいれば、それでいい。
 他の者たちなんていらない。

「僕らのこの使命は、誰にも邪魔させない」

 そして誰にも、もうセリシアを苦しませはしない。