世界の終わりに、君は笑う




「五歳にしてこれほどの力を使えるとは、素晴らしい。もう少し成長すれば、さらに強い力を使えるようになりますね。ああ、この双子は、本当に素晴らしい」

火傷の男が、不気味に笑う。
他のレクスの者たちは、悲鳴を上げていた。
此処は一旦退(ひ)きましょう、と言って、火傷の男はその家から出て行く。

まだ生き残っている二、三人の者たちもまた、一斉に飛び出して行った。

「逃がさないんだから」

セリシアはすぐに狼と共に後を追いかける。
ディオンは、家の中に残ったままだった。
恐る恐る、倒れている女のもとに近寄る。

「……ねえ」

声をかけても、答えなどはなかった。
彼女の目は開いていたが、瞳は光を失っており、虚ろだった。
彼女の周りには、血の水溜まりが出来ている。

冷たくなったその手を握れば、ディオンの両手にも、まだ少し生温かいその液体が、べっとりとつく。