世界の終わりに、君は笑う





それは二日後のこと。
その日、青い空は分厚い灰色の雲に覆われていた。

「ディオン、セリシア。今すぐ、これを着て」

二人でおやつのアップルパイを食べているとき、突然、女は顔を真っ青にさせながら、傍に駆け寄って来た。
外套(がいとう)を着させ、フードも被らせる。

「レクスの者たちが此処に向かって来ているの。だから、今すぐ逃げ……」

彼女が言い終わる前に、勢いよく、扉が開(ひら)かれた。

「ようやく見つけましたよ……〝Ⅰ(ファースト)〟に〝Ⅱ(セカンド)〟」

その男は、顔の半分が火傷の痕で覆われている者だった。

さあ、こちらにおいで、と手を差し伸べる。

「この子たちを、あなたたちになんて絶対渡さないわ」

彼女はディオンとセリシアの前に立ち、火傷の男を睨みつける。

「夫婦揃って我々の邪魔をするとは、愚かですね。今その双子をこちらに引き渡せば、あなたの命は助けてあげましょう。けれど、それを拒むというのなら、あの男同様に、殺してしまいますよ」

 私と彼と、愛しい二人の子ども――四人で一緒に暮らすのが、心からの願いだった。
 けれどその願いは、もう叶わない。

 だったら次に願うのは、愛しいディオンとセリシアの、永遠の幸せ。

「渡すわけないでしょう」

「……そうですか。だったら仕方ありませんね」

くい、と火傷の男が顎(あご)で指示を出す。
研究員の一人が、何かをぶつぶつと唱えはじめた。

「中からを壊してあげましょう」

刹那――彼女の足元に、魔方陣が現れる。
咄嗟に彼女は双子を突き飛ばし、距離をとった。

黒い蛇のようなものが姿を現し、彼女の足元から這い上(のぼ)って来る。
そしてそれは、彼女の口から体内へと入っていった。