世界の終わりに、君は笑う




「ディオンは太陽の石(サンストーン)で、セリシアは月の石(ムーンストーン)よ。太陽と月はなくてはならない存在であり、あなたたち二人も、私にとってなくてはならない存在。だから、二人に出会えたら、このペンダントを渡すと決めていたの」

ディオンはペンダントをじっと眺める。

 どうして、この人は僕らに優しくするんだろう。
 それに、僕らはこの人のことなんて、何も知らないのに……会ったことすらもなかったのに。
 なのにどうして、この人は僕らのことを知っているんだ?

「僕たちを、レクスの奴らに引き渡す気なの?」

セリシアが訊いた。
左右に首を振りながら、女は二人を優しく包み込む。

「絶対、渡さない。もう二度と、手放しなどはしないわ。私はディオンとセリシアの味方よ。これからは、ずっと一緒に暮らしましょうね」

〝嫌だ〟――などとは決して思わなかった。
ディオンにとって、彼女の温もりはなぜか安心出来るものだったから。

一部の感情を失ってしまったセリシアは、彼女の温もりを、一体どう感じているのだろうか。

ただ無表情に、ムーンストーンに触れていた。