世界の終わりに、君は笑う







「……ディオン」

聞き慣れた声が、すぐ傍から聞こえた。
まだ重たい瞼を、ゆっくりと開ける。
少しぼやけながらも目に入ったのは、セリシアだった。ふかふかとしているベッドの上に、二人はいる。

「此処、は……?」

体中に痛みを感じながらも、ディオンは体を起こす――と同時に、扉が開(ひら)かれた。

「よかった。二人とも目を覚ましたのね。昨日から丸一日、眠っていたのよ」

ふわりと頬笑みながら、ホットミルクの入ったマグカップを、二人に渡す。
初めて飲むその少し甘い飲み物に、ディオンは一気に飲み込んでいく。

表情には出ないものの、セリシアもまた気に入ったようだ。女は幸せそうな顔をしながら、二人の頭を撫でる。

「ディオン、セリシア……ずっと、会いたかった」

「どうして、僕たちの名前を?」

撫でる手が、ぴたりと止まる。
先ほどとは打って変わり、彼女はどこか切なそうな顔をしていた。結局、女がその質問に答えることはなかった。

「二人とも、後ろを向いて」

首を傾げながらも、二人は彼女に背を向ける。
鎖が微かに擦れる音が、聞こえた。
そしてディオンの首に、煌々(こうこう)と赤く輝く石を埋め込んだペンダントが、掛けられる。

セリシアには、青の閃光(せんこう)を放つ石を埋め込んだペンダントが、掛けられた。