「あなたたちは……!」
先の方から、女の声が聞こえた。
こちらに近寄って来る足音が聞こえる。
じっと見つめてみたが、霞んでいて、見えなかった。
ふわり、と甘い花の匂いがした――と同時に、頬に、温もりを感じた。
「ああ、やっぱり……」
被っていたフードを脱がせ、ディオンの顔を見るやいなや、その女は声を震わせた。
「ディオン、セリシア」
その声はとても優しくて、なぜか、とても安心するもの。
そのせいか、気張っていた体から、一気に力が抜けていく。
そのまま、ディオンは女の胸元に倒れ込んだ――。
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