「〝Ⅰ(ファースト)〟……君の名前は、ディオンだ」

男の子の顔を見つめながら、言った。

「…ディオン?」

「ああ。そして〝Ⅱ(セカンド)〟……君の名前は、セリシアだよ」

女の子は何も言わず、ただ虚ろなその瞳を、男に向けるだけ。

さあ、立って、と言いながら、男は二人を立たせる。
そして、外套(がいとう)を着させた。

「この部屋から出て左に曲がり、そのまま真っ直ぐ進むんだ。そうしたら、下に小さな窓がある廊下に出る。ひとつだけ窓を開けておいてあるから、そこから外へと逃げるんだ」

君たちの大きさなら、十分に通れるから、と続けた。
男の子――ディオンは、驚いた表情(かお)をする。

「森から抜ければ、先の方に大きな街が見える。そしてその街から少し離れた丘の上に、赤い屋根の家がある。頑張って、そこまで走るんだ」

いいね? と二人の頭を撫でながら、優しく言った。
信じていいのだろうか、とディオンは悩む。