「やめろ、ディオン! 俺はお前と戦うなんて……」

「裏切られたくせに、まだそんなことを言うのか? 本当に、お前は慈悲深い奴だな……。この世界に存在する全ての人間を救いたいのなら、僕を殺せばいい!」

セリシアと同じことを、ディオンもまた叫ぶ。
剣で斬りつけてくるのを、フェイはただ防ぎ続けるだけ。

「手加減するなんて、ずいぶん余裕なんだな」

鋭い刃(やいば)が、フェイの腕をかすめた。

「フェイ!」

アンネッテが叫ぶ。

どうしよう……このままじゃ、フェイが危ない。
でも攻撃魔法を使えば、ディオンが……。
……分かってる、分かってるの。
ディオンは、倒さなければいけない相手だと。

でも、ずっと一緒にいた彼に、攻撃するなんて…!

「アンネッテは下がっているんだ!」

フェイが叫んだ。

アンネッテが魔法を使う前に、ディオンは素早く斬りつけるに決まっている…!
彼女にまで、傷を負わすわけにはいかない。

ディオンは一旦後ろに飛び退き、距離をとる。
それを見計らって、フェイは口を開ける。