「ディオン。俺は……お前に訊きたいことがある」
俯きながら、フェイが言った。ディオンは次の言葉を待つ。
「どうして、俺を連れて旅をしようと考えたんだ……。それに、どうして魔力がないと嘘をついて、護衛をしてほしいなどと言ったんだ」
一体フェイは今、どんな表情(かお)をしているのだろうか。
「僕ははじめから、お前を利用するつもりだったんだよ、フェイ」
利用、ですって?
アンネッテは顔をしかめる。
「僕とお前は、偶然出会ったわけじゃない。お前があの時間帯に街中を通ると知っていて、僕は待っていたのさ。そして、あたかも偶然出会ったかのようにした」
「一体……どうして?」
アンネッテが訊く。
「僕らにとって、これ以上邪魔者が増えることは嫌だった。だから、ダスティを始末したかったのさ。そして、アウリスで一番の騎士でもあるお前は、最もダスティに敬服していた」
この男がダスティの裏の顔を知れば、今まで敬服していたことを呪わしく思い、ダスティに失望するに違いない。
ディオンは、そう考えた。


