世界の終わりに、君は笑う




「十年前、奴らレクスから逃れるとき、僕はそこで初めて人工精霊の力を使い、こいつを生み出した。それからというもの、命を狙われる度に、こいつを使った」

サファイアブルーとスカーレットの瞳が、二人を見る。

「でも……今回は、使わない。お前たち二人は……僕のこの手で、殺(あや)める」

ふわりと風が吹く――と同時に、狼は霧となり、消えてしまった。

生かしておいても、どうせ月食のときに、フェイは死ぬ。
けれど、今殺しておかなければいけない。
僕らの計画を、邪魔されるわけにはいかないのだから。

( ディオン、今回は……ちゃんと殺すんだよ )

心の中で、彼女が話しかける。

……ああ、分かってる。
今回こそ、フェイとアンネッテを、この手で……。

無意識に、ディオンは拳を握り締める

( ――どうして、ディオン…… )

不安そうな声が、心の中に響いた。

何が……?

本人はまったく、理解出来ていない。
しばらく待っても、彼女からの返事はなかった。