ディオンは狼の喉を突き通っている長剣を引き抜く。
「お前たち二人も、僕らにとって邪魔者なのさ」
『……邪魔者は、みんなそこで殺す』
あのときの言葉が、二人の脳裏に響いた。
「どうしてよ、ディオン……。私たちは、仲間なのよ?」
「…お前たちは仲間なんかじゃない」
どくん、とフェイの心臓が大きく脈打った。
「お前たちも含め、この世界に存在する全ての人間が、僕らの敵。信頼できるのは、セリシアだけだ」
それに、と続ける。
「お前たち二人も、僕のことを疑っていたじゃないか」
「それは……」
返す言葉が、なかった。
「…こいつは敵を殺すのに、優れている奴なんだ」
狼の体に触れながら、言う。


