朝市で賑わう街中を彼は一人足早に通り過ぎていき、そして立派な王宮の中へと姿を消す。
「おはようございます、フェイさん」
何か御用でも? と、扉の前に立っている警備の者が訊(き)く。
「陛下と話がしたいんだ」
「ダスティ様は只今、他の者と対談しています。確かエルヴィスという名のお方ですよ」
「エルヴィス? 聞いたことのない名だな……」
仕方ない、後でもう一度来るとしよう。
立ち去ろうとした、そのとき、その壮麗(そうれい)な扉が開(ひら)かれた。
アイビーグリーンの髪に、白のメッシュを入れた男が、中から出て来る。
すれ違い際に、一瞬二人は目が合ったが、特に何もなくその男は通り過ぎて行った。
「フェイさん、中へどうぞ」
見張りの者がフェイを促(うなが)す。
そこではいくつものシャンデリアが煌々(こうこう)と輝き、大理石によって造られた床が、その輝きをより一層美しく映し出していた。
先の方に見える壇の上に、立派な髭(ひげ)を生やした男が一人、豪華な椅子に堂々と座っている。
「久しいな、フェイよ」
「お久しぶりです、陛下」
国王のもとへ行き、跪(ひざまず)く。


