世界の終わりに、君は笑う




「俺が、こんな化けモノに殺(や)られるなんて……納得いか、ねぇ……」

左足を食い千切られ、再び叫び声を上げながらも、まだ隠し持っていたナイフを、エルヴィスは取り出した。
高く、ナイフを振り翳(かざ)す。
ヒャハハ、と最後に笑い、勢いよく、自身の心臓に突き刺した。
しばらくして、エルヴィスはまったく動かなくなる。

狼は唸りながら、ディオンの傍へと戻る。
彼は小さく、ため息をついた。

「お前のせっかくの楽しみが、なくなってしまった」

狼の額に刺さったナイフを抜き取り、そこを撫でながら言う。

「……どうしてだ、ディオン」

フェイが口を開(ひら)けた。

「俺が双子を捜していると知っていて、どうして……一緒に旅なんかしたんだ。どうして、双子を捜すようなマネを……」

「お前は何を勘違いしているんだ、フェイ」

ディオンが、遮った。

「僕は一度も〝お前に協力する〟なんて言っていない。ただお前に、〝護衛してくれ〟と言っただけだ」

フェイは口を噤(つぐ)む。
確かに、ディオンの言う通りだ。一言も〝双子を捜すのを手伝う〟などとは言っていない。
信頼していくと共に、フェイは勘違いしてしまっていた。