世界の終わりに、君は笑う




「左目がスカーレット。そして、左手の甲に精霊使いの証だと……」

可笑(おか)しい、と呟いた。

「邪魔者は、消さないと」

パチン、とディオンはフィンガースナップをする。
刹那――黒い霧が集まり、王宮のときと同様に、オッドアイを持った一匹の狼となる。

「喰ってしまえ」

エルヴィスを指差して言うやいなや、狼は勢いよく襲い掛かる。

「殺されてたまうものか!」

咄嗟にナイフを取り出し、投げつける。
ぶすりと狼の額に刺さったが、全くといって怯む様子はなかった。

「くそ!」

耳に響くほど大きく咆哮(ほうこう)しながら、エルヴィスに飛び掛かり、馬乗りになる。

「何……きいていないだと!?」

エルヴィスの剣は狼の喉を突き通していたが、全く手ごたえなどなかった。

「心臓を突き刺し、一撃で殺すなど面白くないな」

ディオンは続けて言う。

「足と腕を食い千切ってから、お前がされたように、額と喉を尻尾で突き刺せ」

それから魔力を喰えばいい、と言った。
狼は忠実に従い、まずは右足を食い千切る。叫び声が、森の中に響いた。