「どうせ、あなたたちも此処で死ぬのだから、最後に教えてあげましょう。〝Ⅱ〟の中には、人工精霊の本体(からだ)があり、そしてヤツの精神(心)は、〝Ⅰ(ファースト)〟の中で眠っているのですよ」

人工精霊が眠りから目覚めしとき、〝Ⅰ〟の中にある精神(心)は〝Ⅱ〟の中にある本体(からだ)に戻り、そして〝Ⅱ〟と一心同体になる。

「〝Ⅱ〟の精神世界(こころ)を壊し、我々が操るようにすれば、この世界は手に入ったも同然のことなのですよ」

「ひど、い」

本当に、ひどい。

アンネッテは胸の内で呟く。

「十年前、双子が五歳になってから、我々は〝Ⅱ〟の精神世界(こころ)に度々入り込んだ。寄生虫は使わず、我々人間の手で、完全に狂わないように、壊そうとしたのですよ」

しかしその度に、〝Ⅱ〟の中にある人工精霊の力が、拒絶反応を起こした。

「壊そうとすれば、無理やり精神世界(こころ)から追い出されてしまう。それの繰り返しでしたよ。そして、双子たちは逃げてしまった」

そっと男は火傷の痕に触れる。

「これは、漆黒のワイバーンがガラスケースを壊し、研究所を火の海にしたときの傷痕でしてね。そのとき私は思ったのですよ。この人工精霊なら、世界を手に入れることが出来る、と」

だからこそ必ず、双子を捕まえなければならない。

「誰にも渡しはしませんよ。あの双子は、我々レクスのものなのです!」

クックック、という笑い声が、気持ち悪い。

「お喋りはこれで終わりです。殺しておきなさい」

火傷の男、そして数人の者たちが三人に背を向け、去っていく。