「奪われた研究資料を、取り返しに来たんだろうな」

ディオンが言う。

「だったら、奴らは王室に行っているはずだ!」

咄嗟に、フェイは走り出した。
アンネッテとディオンも、後を追う。
息を上がらせながら、王宮の入り口まで一気に走る。

見張りの者たちも魔法にかかり、眠っていた。
長い廊下を、三人はひたすら走り続ける。

「もうすぐだ…!」

フェイが呟いた、その刹那。

「ぎゃあぁぁぁぁ!」

男の叫び声が、辺りに響いた。
バン! と勢いよく、その豪勢な扉を開ける。

「おやおや、これはまた珍しいお客さんですね」

クックック、と笑い声を出しているのは、白衣を着ている男。
顔の半分は、火傷の痕で覆われていた。

「ダス、ティ…」

何が起こっているのか、理解することが全く出来なかった。
国王はなおも悲鳴を上げながら、目を剥(む)き出しにし、苦しむように暴れていた。

何人かの騎士が、血を流しながら倒れている。
おそらくレクスに対抗しようとし、逆に殺(や)られてしまったのだろう。