( ああ。気付くどころか、人間の方は精霊使いを信頼しているぞ )
もう一方の灰色のケルピーが答える。
( 真実を知ったとき、人間はどうするのだろうか…… )
( さあ、分からない。人工精霊を消すため、精霊使いを殺すか……はたまた、信じられないと動揺している隙を狙われ、逆に殺されるかだな )
なんせ人間の心は弱く、儚いのだから、と続けた。
( せいぜい抗えばいい、哀れな精霊使い。この世界の結末がどんなものになろうと、俺たちはただ見守るだけだ )
漆黒のケルピーが呟いた。
精霊でも人間でもない、可哀想(かわいそう)な精霊使い。
最後にお前たちの思いが報われるのなら、たとえ人間がこの世界から姿を消そうと、俺はそれを受け入れてやろうじゃないか。
お前たちは幾(いく)年ものあいだ、苦しんできたのだから――。
三体のケルピーは、ディオンが見えなくなるまで、その後ろ姿を見つめていた。
( ……俺たちも、もう行こう )
街にまで響くほどの大きな雄叫びを上げ、ケルピーはそこから姿を消した――。