「気持ち悪い人だったね」
アンネッテが言う。
「ああ。関わるべき者ではないな……」
次に出会ってしまえば、何かが起こる。
なぜか、そう思った。
「もうすぐで森を抜けるぞ」
ディオンの声に、一気に二人は身を引き締める。
木々がなくなり、辺りの景色が一変した。
先の方に、懐かしい風景が目に入る。
「此処からは歩いていく」
ディオンは漆黒のケルピーから降りる。
未だ、仮面をつけたままだ。
「ありがとう、ケルピー。この近くには、湖があるから」
それじゃあな、と言って、歩きはじめる。
( ……共にいる人間とエルフは、気付いていないんだな )
三人の姿が遠ざかっていくのを眺めながら、灰色のケルピーが言う。


