「お前と会うのは二回目だな、フェイ・ブランデル」
ヒャハハ、とまた笑う。その笑い声が耳に纏わりつくようで、気持ちが悪い。
「そっちのエルフはいい女だなあ」
ぺろり、とエルヴィスは己の唇を舐める。
アンネッテは嫌悪感を抱(いだ)いた。
「で、仮面をつけているお前が、精霊使いか」
ディオンは何も答えない。
「精霊使いに、プラチナブロンドの髪……。可能性はあるな」
エルヴィスが呟いた。
「おい、ディオン。こんな所で時間を喰うわけには……」
フェイが小声で話しかける。
『アイツは、あまりなめない方がいいよ』
セリシアは、そう言っていた。
今此処でエルヴィスの相手をするわけにはいかない。
「分かってる。ケルピー、いけるか?」
( 俺たちに追いつける奴なんて、いるわけない )
「そうか。じゃあ、いけ!」
刹那――耳の奥まで響くような雄叫びを上げ、ケルピーは走り出す。
エルヴィスは三人目掛けてナイフを勢いよく投げつけた。
しかし、いとも簡単にケルピーはそれを避ける。
エルヴィスの頭上を飛び越え、彼が振り返ったときには、もうすでに三人の姿はなかった。
ヒャハハ、と一人笑う。
そして木に刺さったナイフをひとつ手に取った。
「まあ、お楽しみは、後にとっておいた方がいいからな」
まるで何かを味わうかのように、エルヴィスはナイフをべろりと舐めた。
「精霊使い、必ずその仮面を……その化けの皮を、剥(は)がしてやる」
気味の悪い笑い声が、その場に響いた――。


