「で、もう行くのか?」
アウリスの国章を左胸につけ、軍服を着ているフェイの姿は堂々としている。
「ああ。陛下の所へ行きたいからな」
「真実を知ったところで、どうするつもりだ」
「もしお前の話が本当なら……俺は陛下にレクスとの繋がりを切るように、説得してみるさ」
「奴は説得されて考えを変えるような奴じゃないぞ」
「それでも、やってみないと分からない」
あっそ、とつまらなさそうにディオンは言う。
「殺してしまえば?」
一呼吸入れ、憎悪の念を含んだ瞳で、平然と言った。フェイは思わず口を噤(つぐ)む。
そんな彼を余所に、ディオンは続ける。
「どうせ説得したって無駄だ。だったら国民のために、奴を殺せばいい」
そうすればレクスとの繋がりも切れ、国民は平和に暮らし続けることが出来る。
「……殺さない」
「なぜ?」
不思議そうな顔で、フェイを見つめる。殺すことを、さも悪くないと思っている様子だ。
「たとえ陛下が裏の組織と繋がっていようと、何も知らない国民にとって、民思いのダスティ陛下は必要な存在だからさ」
ふーん、と言いながら、ディオンは椅子に掛けてあった外套(がいとう)を手に取り、羽織る。


