森の中を、颯爽(さっそう)とケルピーは走っていた。
「もうすぐだな」
ディオンが言う。
この森を抜ければ、アウリスが見えてくる。
あと少しで、国民を助けることが出来るんだ。
フェイが胸の内で呟いた矢先、突然ディオンを乗せ、先を走っていた漆黒のケルピーが足を止めた。
つられるように、二体の灰色のケルピーも足を止める。
どうしたんだ?
ディオンの方に目をやれば、いつの間にか仮面をつけているではないか。
アンネッテも不思議そうに、首を傾げている。
「そこに隠れている奴、出て来い」
ディオンが言った。
ヒャハハ、と不気味な笑い声が、その場に響く。
気味の悪いその声に、フェイもアンネッテも眉を顰(ひそ)める。
ガサガサと物音を立てながら姿を現したのは、一人の男。
あ、とフェイは声を漏らした。
アイビーグリーンの髪に、白のメッシュ。
あの日――ダスティのもとへ行った日に、すれ違った者……国王に雇われている傭兵だ。
「エル、ヴィス」
そう、確か、名はエルヴィス。


