「犠牲になった者たちを、埋葬しに来たのですよ」
「なっ……」
フェイは言葉を失う。
「じゃあこのお墓は、アウリスの人々ということ……?」
震えた声で、アンネッテが言った。
「…ダスティ様は、生きた人間の中で、人工精霊を生み出そうとしました」
「そんなことなど、どうせ出来やしなかったのだろう」
ディオンは続けて言う。
「人間が完璧な人工精霊を造ることなど、無理に決まってる」
ええ、とビヴァリーは答える。
「体内にまだ幼体ともならぬ人工精霊を入れられた人々は、時間が経つにつれて衰弱し、数日後には亡くなってしまいました」
もうやめましょう、と言おうと、ダスティはそんな言葉など聞き入れなかった。
「人工精霊を入れる〝器〟が悪すぎるんだ、とダスティ様は言うのです」
ディオンは、不快そうな表情をする。
「死んだ者など、適当な場所に捨てておけ……そう命じられました」
けれど捨てておくなど、出来やしない。
「此処ならアウリスからも離れていますし、ダスティ様に見つかることもない。それに、とても静かな場所でもあります。だから私は……」
その先は、掠れて声にならなかった。
悔しそうに、唇を噛み締めている。
「俺は……陛下を倒す」
え、とビヴァリーは顔を上げる。
「ですがダスティ様の後を継ぐ者はいません。今ダスティ様が亡くなってしまえば、誰がアウリスの人々をまとめればいいのか…」
「それは、あなたの仕事であるはずです」
もうダスティを見逃しておくわけにはいかない。
これ以上、好き勝手させるわけにはいかないんだ。
「では、俺は先を急ぐので」
灰色のケルピーへと再び乗り、そして走り出した――。


