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「行くぞ」
太陽が姿を現した頃には、すでに三人はケルピーに乗っていた。
ひんやりとした、そのたてがみを掴む。
それを確認したかのように、ケルピーは雄叫びを上げて、走り出した。
先を走る漆黒のケルピー。
そこに乗っているディオンの後ろ姿を、フェイは見つめる。
『私……ディオンが〝Ⅰ(ファースト)〟だと思うの』
アンネッテの言葉が、脳裏に響いた。
そんなはず、ない……。
オッドアイでもなければ、額に漆黒の紋章もあるわけでもない。
それに、双子は莫大な魔力を体内に秘めているはずだ。
ディオンは、魔力がないと言っていた。
だから――……。
「フェイ」
ディオンの声に、伏せていた目を上げる。
「昼頃にはアウリスにつく」
「そうか」
今は、ディオンが双子かどうかなんて思い悩んでいる場合じゃない。
人工精霊を生み出すために、犠牲となっている国民を、一刻も早く助けなければ。
「今度は、ダスティを殺しなよ」
ディオンが言った。
「あのとき殺していれば、こんなことにはならなかったのに」
ぽつりと呟かれた声が、フェイの耳に入る。


