世界の終わりに、君は笑う







「俺は……そうだとは思わない」

アンネッテは驚く。

「どうして? 妹の方であるセリシアは、この世界から人間を消すと言っていたわ。そして、ディオンもまた人間なんて消えればいい、って言っていたのよ?」

「けれど、ディオンはクレタスで赤ん坊を助けたじゃないか」

「それは……」

「それに、もしディオンが双子の片割れなら……額には人工精霊との契約の証――漆黒の紋章があるはずだ」

そして、瞳もオッドアイのはず。アンネッテは返す言葉がなく、目を伏せた。

「俺は……仲間を疑いたくなんてないんだ」

それはアンネッテも同じ思いである。
しかしそれでも、ディオンのことを疑ってしまう。

「…ごめんなさい。私が、悪かったわ」

目を伏せたまま、ぽつりと言った。
フェイもまた目を伏せ、黙り込む。

( どうしたの、ディオン。 そんなに心を冷たくして )

 ――そろそろ、潮時かと思ってね。

太い木に身を隠し、ディオンがその会話を聞いていたなんて、二人は知るはずもなかった――。