「俺たちも戻ろう」
「待って」
アンネッテがフェイの腕を掴み、引き止める。
「どうしたんだ?」
言いにくそうに、彼女は唇を噛み締める。
「アンネッテ?」
「……双子の、ことなんだけど」
ゆっくりと、口を開いた。
「私……ディオンが〝Ⅰ(ファースト)〟だと思うの」
え、とフェイは固まる。
「だって、変だと思わない?」
何が? と訊く。
「ディオンはフェイと出会う前も、旅人だったんでしょう? それにしては、レクスや人工精霊のことを、詳しく知りすぎていない?」
「だから、それは噂を聞いて……」
「三大掟を破っている組織が、それほど簡単に噂を流されるような行動をすると思えないわ」
それに、と続ける。
「もし本当に噂で知ったのなら、そんな大事(おおごと)の噂なんて、もっと周りに広まっているはずよ」
確かに、とフェイは呟いた。
しん、と二人の間に沈黙が流れる。
ディオンが、〝Ⅰ〟だって?
そんなこと、信じられない。
もし双子の片割れなら……どうして俺と一緒に旅をしようとしたんだ。
俺が双子を捜していると知っていて……どうして。


