「でも、ディオン……」
アンネッテが心配そうに声を掛ける。
「手出ししたら、許さない」
顔は見えないものの、後ろ姿だけでも殺気立っていると分かるほどだ。
びくりとアンネッテは体を震わせる。
ケダモノですら、一瞬怯んでしまった様子だ。
「さあ、続きといこうか」
再び、ディオンはケダモノへと襲い掛かった。
次々と、喉笛をかき切っていく。
すると怖気ついたのか、残っているケダモノが逃げはじめた。
「逃がさな……」
「ディオン、もういいでしょう」
追いかけようとしたのを、アンネッテが引き止める。
「はむかってきた奴は、全て殺すのが当たり前だろう」
「……明日も早くから出発するんだし、もうそろそろ体を休めましょう」
それに、と続ける。
「纏わりついた血は出来るだけ早く落とさないと、こびりついて落ちなくなるわ」
はぁ、とディオンはため息をつく。
「わかった。洗い流してくる」
そそくさと二人の横を通り過ぎて行った。


