「もっと手ごたえのある奴はいないのか?」
( 攻撃魔法、使えばいいのに。その方が一気に倒せるよ )
「ああ、そうだね。魔力なんて最近全く使っていないし、久々に……」
「ディオン!」
その声に、振り返る。
フェイとアンネッテが、息を切らしながらそこにいた。
「何が〝大丈夫だ〟だよ。獣の気配を感じないとか言っておいて、実際今、囲まれているじゃないか!」
明らかにフェイは怒っている様子だ。
此処に駆け付けたのは、おそらくアンネッテが獣の気配を察知したからだろう。
ディオンは、イラッとする。
( 何をそんなに苛立っているの )
…二人が来たせいで、魔力が使えない。
小さく舌打ちをして、ケダモノの方へと再び目をやった。
「これは僕の獲物だ。二人は手を出すな」
それは恐ろしいほど、冷たい声。
( ディオン、仮面をつけておいた方がいいよ )
…そうだね。
フェイとアンネッテには見えていないが、ディオンの左目はサファイアブルーからスカーレットに変わっていた。
不気味な仮面を、ディオンはつける。


