世界の終わりに、君は笑う




湖は、激しく波立つ。
雄叫びを上げながら、ケルピーは水面から次第に姿を現した。
鋭い目付きの蒼い瞳に、壮烈さを感じさせる漆黒の毛色。
魚の尾までもが漆黒だった。
こちらへ近付くにつれて、魚の尾は足へと変わり、完全な青毛(あおげ)の馬の姿へとなっていく。
同じく魚の尾を足へと変えながら、灰色の毛色である葦毛(あしげ)の馬が二体、そのケルピーの後を追うように水面から姿を現した。

( 精霊使いに人間、そしてエルフか。何とも可笑(おか)しな組み合わせだ )

漆黒のケルピーが言う。

( 特に精霊使い――お前が人間と共にいるなんて、滑稽(こっけい)だな )

その言葉の意味が、フェイやアンネッテには分からなかった。

「僕らをアウリスまで」

当の本人は、ケルピーの言葉など全く耳にしていない様子だ。
乗れ、とケルピーは言う。
ディオンは慣れた手つきで飛び乗った。
恐る恐るフェイとアンネッテも灰色のケルピーへと乗る。
水の妖精であるためか、ケルピーはひんやりとしていた。
そして、各々(おのおの)を乗せたケルピーは雄叫びを上げ、颯爽(さっそう)と走り出した――。