「水悍馬(ケルピー)だよ。制御することさえ出来れば、名馬になるの」
「へぇ、そうなのか。俺が妖精の馬を扱いこなすのは難しいだろうな……。アンネッテは制御出来るのか?」
アンネッテは、全く、と言いながら首を左右に振る。
そして、二人して、ディオンの方をじっと見る。ディオンが出来るのか? とでも言うようかの瞳だ。
そんな二人の様子を見て、はぁ、とディオンはため息をつく。
「精霊使いをなめないでくれる?」
僕が二人よりも年下だからって、甘く見るなよ。
胸の内で呟き、明らかに不機嫌そうな顔をする。
ディオンの言葉を聞いて、まるで安堵したかのように二人は息をついた。
「早速川か湖を探しましょう」
「そうだな」
さっさと二人は歩きはじめる。
ディオンもまた前へと足を進めたが、すぐに立ち止まった。
『君も僕らの計画に賛成だよね』
セリシアの言葉が脳裏に響く。
「僕は……」
人間なんて、嫌いだ。
消えてしまっても構わない。
けれど――……。
『人間がいないと困る妖精だっているのよ』
今度はアンネッテの声が頭の中に響いた。


