「…なんでもない。ところで、お前はアウリスに行っても平気なのか」
本当は地下牢に入れられているはずの身であるというのに。
「もし騎士たちが俺を捕まえようとするなら、それを振り切ってでも、国王のもとまで行って見せる」
元下部たちが敵になるのは胸が痛いが、それでも、ダスティの卑劣な行為を止めなければいけない。
「早く行きましょう。此処からアウリスまで最低四日はかかるわ」
「四日も……」
行くだけでそれほどの時間がかかってしまえば、月食までに双子を見つけ出す時間なんて、到底ない。
「もっと早く着く方法はないのか?」
んー、とアンネッテは頭を悩ませる。
「馬を使えばいい」
ディオンが言った。
「あ、そっか。その方法があったわね」
アンネッテも察しがついたようだ。
「馬? 馬なんてどこに……」
「水辺にいるさ。〝悍馬(かんば)〟がね」
暴れ馬だって?
そんなのが水辺に…?
フェイはまったく理解が出来ず、首を傾げる。


