「…その掟とレクスと、一体何が関係しているんだ」

「レクスはその掟に逆らい、人工精霊の研究をしている裏の組織だ」

普通、人間の前では姿を消して存在している精霊。それゆえに、精霊については未だ分かっていないことばかり。
けれどひとつだけ、分かっていることがある。

「精霊は人間や獣類にはない、不思議な力を持っている。そしてその力の威力は、圧倒的に人間が持っている魔力の威力を超えている。精霊が本気を出せば、世界はいとも簡単に壊れてしまうとも言われているのさ」

「レクスは精霊の力を手に入れ、この世界を支配しようとでも考えているのか」

そうだ、と言って、呆れたようにディオンはため息をついた。

「けれど、人間には新しい命など造り出せないんじゃ……」

「〝完璧なモノ〟は造れないのさ。つまり、それなりの研究を重ねていけば、精霊らしきモノを造ることは可能だ」

ディオンは一呼吸おく。

「だが不十分な力で造られるがゆえに、その人工精霊には問題が多すぎる。ソレを化けモノと言っても、過言ではないだろうな」

少し冷めてしまった紅茶を、一口飲む。冷静沈着なディオンに対し、フェイは渋い顔をしていた。

「ダスティ陛下が、そんな奴らと繋がっているだなんて……」

信じられない、という顔をするフェイに、ディオンは冷めた瞳をした。フェイは残りの紅茶を一気に飲み干す。

「ディオンの情報は信じ難い。あの温厚な人柄のダスティ陛下が、裏の組織と繋がっているとは思えない」

「…まあ、信じるか信じないかはお前次第だ。だが、奴のことを善人だと思うのはやめた方がいいぞ」

フェイは、何も答えなかった――。