「……本当にイヤなら、はっきりイヤって言っていいんだからな。アイツ、強引なとこあるし」 「そう、ですね」 はっきり言えたらいいんだけど……はっきり言って、また変に冷やかされたらイヤだし。 なかなか言えそうにもない。 「あんまり、無理すんなよ」 「……っ」 増岡綾綺って……やっぱり大人なんだ。 まさかこんなに優しい人だとは思わなかった。 「ありがとう、ございます……」 「別に、思ったこと言っただけだし」 無表情でそう言った彼だけど、頬がほんのり赤い気がした。