力任せに戸を蹴破られなくて良かった。

 叔母夫婦のいる母屋の方へ行ったのではないかと思えば恐ろしかったが、桂桂は自分の行動を後悔しなかった。

「姐姐、大丈夫?」

「……桂桂」

 珠明は真っ青な顔をしていた。

「姐姐、今日は寝ていたほうが良いよ」

「そういうわけには……」

「大丈夫、姐姐の分までぼくが働くよ」

 桂桂は苦労して姉を炉の傍に座らせ、片付けたばかりの寝具をまた広げた。

「ほら、」

 ためらう珠明を促して、横にさせる。

「……そうだわ、桂桂、さっきの男の人……」

「あんな変なやつのことなんか、忘れた方が良いよ」

 珠明の体調が悪化したのはあいつのせいだ、と桂桂は唇を尖らせた。

 姉の看病に徹したいのはやまやまだが、彼女の代わりに朝食を作らなければいけない。

 水瓶から汲んだ水を姉に飲ませてから、自分は火を見るために鍋が掛けてある炉の傍に座る。