「いいえ、此処にあるはずなのです。どうしても隠し立てするというのなら……」

 男の声が、険を帯びる。

 珠明は体の重さに堪えきれず、ふらついた。

「帰れ!」

 ひときわ大きな声を出したのは、桂桂だった。

「ひすいなんか知らないやい!早く帰れ!」

 姉を守らなければいけないと、彼は戸口に駆け寄って怒鳴った。

「こ、この私に向かって、な、何という口を、この小僧……っ」

「姐姐はぐあいが悪いんだ。あんたの相手なんか、してられないんだからなっ」

 かっとした相手が腕を上げた瞬間、桂桂は思いっきり戸を閉めた。

 疼!と男の悲鳴が聞こえたが、気にしなかった。

 急いで閂をしめる。

 とうとう床に崩れ落ちた姉の体を抱きしめながら、しばらくじっと息を潜めていたが、どうやら相手は諦めて帰ったらしかった。