「こんなきれいな飾りをつけて水汲みをする人はいないと思うけれど」

「そういえばそうね」

 それに、二人の住むこの郷はあまり豊かとはいえない。

 この近辺の郷をまとめる県令が強欲と悪名高く、国が定めるよりも余分に税を取られてしまうのだ。

 例え婚礼であっても、そうそう華美な装いはできない。

「ぼく、こんなきれいなもの初めて見たよ」

「わたしもよ。……誰かが落としたのなら、返して差し上げないといけないけれど……桂桂が見つけたのだから、あなたが持っていなさい」

 姉に言われ、桂桂は小さな布袋を取り出すと、それをしまった。

 ところどころ擦り切れ、薄汚れた布袋には、両親の形見である玉が入っている。

 もともとは同じような玉がいくつにも連なった首飾りであったものだ。

 叔父夫婦が金目のもの一切合財を自分たちの物にしたため、姉弟は両親の形見と呼べるものを何も持てなかった。