その話に、半ば呆然として珠明は言った。

「そうだ。各郷から、若い娘を一名ずつ出すことになっている。この郷で、条件に当てはまるのは、おぬししかおらぬのだ」

 何という乱暴な話だ。

 これが天子の命ならばともかく、一地方の県令が出す命令とは思われない。

 珠明は憤りに唇を噛んだが、まさか目の前の役人にそれを訴えるわけにも行かなかった。

 そんなことをすれば、弟もろとも笞刑に処されかねない。

「なんて幸運だろうねぇ!こんな良い話があるだろうか、珠明。お前は県令様にお仕えすることが出来るんだよ!丁度、あんたに良い嫁ぎ先はないかと悩んでいたところなんだよ。良かったじゃないか!」

 沈み込む珠明とは正反対に、叔母が浮かれた声で言った。

 確かに、珠明は今年で十六歳であり、そろそろ結婚しても可笑しくない年である。

 珠明を県令へ差し出せば、叔父夫婦にも何がしかの金品が下賜されるのだろう。

 お荷物のこどもが一人減った上に、懐が暖かくなるのだから、彼女にとっては確かにこの上なく良い話であるに違いなかった。