そういうことがたった一度なら良かったのかもしれないが、そうはいかなかった。
以前心から愛したマキとの再会。
アスカとの約束を2~3度断りマキと過ごす時間を重ねると、アスカを不安にさせると同時に、マキに対するヒロトの情は増してしまった。
“俺って、ズルいな……。
いつの間にこんな汚い人間になったんだろう”
ヒロトは、マキに再会してからの自分に嫌気がさしていた。
昔、人にさんざん利用されたので、自分は絶対そんな人間にはならないと決めていたのに、今の自分はどうだろうか。
マキを突き放すことも出来ず、アスカに本当のことを話すことも出来ず……。
ヒロトは、アスカに出会い、彼女の純粋な性格に惹かれた。
アスカにマキの存在を知られ、それを失いたくないと強く思った。
“俺がマキと会ってるって知ったら、アスカは間違いなく俺を嫌いになるよな。
今の俺は、アスカの優しさをいいように利用してる、最低なヤツだ……”
かといって、精神的に不安定なマキを孤独にさせるのも心配だった。
マキにはどうやら、親しい友人が一人もいないらしい。
昔はもっと、周囲と活発に交流していたが、二度の離婚に子育て生活が重なり、マキには自由な時間など無いに等しかった。
かつてマキと親しかった女友達数人も、独身で自由に暮らしているか、結婚し旦那と幸せに過ごしているかのどちらかなので、マキは、かつての友人達に自分の悩みを吐くことができなかった。
順風満帆(じゅんぷうまんぱん)な友人達と違い、自分は不幸になってしまった――。
そんな、女としてのプライドも、マキをさらに苦しめ、追いつめた。


