予定を決めてから海に出向かったのは、あれから一週間が過ぎた土曜日だった。

8月に入ったばかりの太陽はガンガンに暑さをまし、まるで肌を傷めつけるような勢いだった。


「うわっ、すっげぇ人」


目の前に広がるのは真っ青な海。

土曜日の所為か海岸が見えなくなる程にまで人で埋め尽くされていた。


タクは顔を顰めて海を見渡す。


「あ、あっちいいんちゃう?」


晃くんがそう言って指差した場所に目を向けると、丁度シ―トが引けるくらいの空間がある。

でも、周りは人ばかり。

それだけでウンザリする。


「つか、なんなんお前の恰好」


砂浜を歩きながら隣に居るタクはあたしに嫌な視線を送る。


「なんなんって普通やん」

「いやいや海に来るような恰好じゃないやん」


そう言われて全身を見た。

デニムのショートパンツにTシャツ。大きな麦わら帽子にサングラス。

いかにも普通。でも、ちゃんと、下には水着は着てる。


「そう?」

「うん、そう。それに何それ」

「何ってなに?」

「手に持ってるやつ」

「何ってパラソルやん」

「それいるん?」

「いるに決まってるやん。日焼けするし」

「海は日焼けするところやろ」

「だから持って来てるんやん」

「あ、そう」


そう素っ気なく返したタクは白い目で見た。