「あー、そう言えば、あそこの海岸沿いにある旅館、肝試しに有名なんやて」

「あ、あれやろ。あの廃墟になってる建物やろ」

「そうそう。前、先輩が行って探検したらしい」

「霊が出る噂やん」

「ついでに行ってみようぜ」


タクと晃くんが繰り広げる声に反応したあたしはガバっと顔を上げて咄嗟に首をブンブンと振った。


「え、嫌やで。あたし行かへんから」

「探検するだけやん」


タクが言った言葉にもう一度強く首を振る。


「嫌や。絶対嫌や。幽霊なんか怖くて絶対いややわ」

「そんなんただの噂やんけ」

「噂でも嫌やで。なー千穂?」


顔を顰めたまま千穂に視線を送ると、千穂は意外に普通の表情。


「いや、案外おもしろいかもしれへん」

「はぁ?何言ってるん!!廃墟になった旅館やで!!お化け屋敷やん」

「ちょっとスリルありすぎるやん」

「スリルがありすぎるから怖いんやん」

「だからそれがおもしろいんじゃないん?」

「そんなん、おもしろくないわ。怖いだけやわ」

「別に一人で行くんじゃないんやしいいやん。あたしも晃も拓斗も居てるんやで」

「そー言う問題じゃないし」


もー、みんな勝手なんやから。

なんでいっつも決めてしまうんよ。

でも、だけど結局はそれに従って着いて行ってるあたしって何なんやろ。