「なータク?」
目を閉じて暫くした後、千穂がそう口を開く。
「うん?」
「音羽と何かあったん?」
「え?何で?」
「うーん…何か音羽の様子がおかしいねんな」
「おかしいって?」
「変な事言うねん。電話なってへんだ?とかさ、誰か見たとか…」
「それ、音羽が?」
「うん」
「今、音羽は?」
「寝てる」
「…それ俺にも言っとった」
「え、何?それって霊…とか?」
会話の中に入ってきた晃くんの声。
目を瞑ったままで何も寝てないあたしはその会話に耳を傾けた。
「うん。って言うかな、音羽相当疲れてるんやわ。…なぁ、タク?」
「うーん…」
タクは曖昧に呟いた。
その後、車内は静まり返った。千穂も寝てしまったのか話す声も聞こえなくて、晃くんとタクの声すら聞こえなかった。
だから、あたしもいつの間にか目を閉じてた。



