「ちょ、音羽大丈夫?どこで切ったんよ?」
「大丈夫?病院行ったほうがいいんじゃないの?」
「タオルないん?」
「あ、消毒液あるよ」
千穂、先輩達の声が慌ただしく入り込む。
そんな声を聞きながらあたしは、いつ切ったのかも分からない手の平をボンヤリと見てた。
洗い流しても落ちてくる血。
深く切ってんのか、切り口から出てくる血に気分が悪くなる。
「もー帰るわ」
暫くしてタクが手にタオルを縛ってくれてすぐ、タクはそう言った。
まだこれから何処かに行くであろう先輩達と別れ、あたしと千穂は車に乗り込む。
タクと晃くんは煙草を咥えて外に居る。
「なぁ、音羽大丈夫なん?」
「うーん…」
そう微妙な返事で返す。
「痛い?ってか痛いよな、そんなに切ってんねんから」
その言葉に何も返せない。
だって、ほんとに痛くないから。
手…麻痺してんだろうか。全然、痛さが伝わってこない。だけど、グルグルと巻いてあるタオルが微かに赤色に染まっているのが分かる。



