だけど、そのすぐ後にまた耳の異変が起きた。
さっきまでピタっと止まってた電話の音が自棄に大きく聞こえてくる。
いやや、何なんこれ…
頭が痛くなりそうなその感覚にあたしはタクを掴んでいた右腕を離し、耳が痛くなるほどに握り掴み、あたしはその場所にしゃがみ込んだ。
「おい、音羽どーしてん?」
「……」
「なぁ、音羽!?」
タクがあたしの身体を揺する。
ユラユラと揺れる身体が余計に気分を悪くする。
「…ごめん、タク。もう…帰りたい」
自分でも分かった。
泣きそうな声でそう言ってる自分の声が。
多分、初めてだと思った。タクにこうやって泣きそうに言ってる自分は初めてだと思った。
そんなあたしを見たタクはあたしの身体をそっと支え立ち上がらせる。
小刻みに震えている身体をタクは何も言わずにあたしを支え、ゆっくりと足を進めた。
縺れながら必然的に着いて行くあたしの足。
震える身体と未だに変な違和感を感じる耳が途轍もなく恐ろしく感じた。



