「とりあえず、」
そう言ったタクは自分の首に巻いていたタオルをあたしの手に括りつける。
その手をずっと見ていた視線をチラッと廊下に向けた瞬間だった。
ドクン。と高鳴って心拍が一気に上がる。
なんの為の織り鶴かまったく分からない先に、誰かが立っている。
白い服を着た髪の長い女の人が、…こっちを見てる。
まるであたし達を監視するようにジッと、無表情のまま見てた。
「タ、タクっ、」
慌ててタクの腕を揺すった。
「うん?」
「誰か…居る」
「え?」
「だから誰かおるんやって」
「どこに?」
「そっち」
「そっちって?」
「廊下の先」
目線をタクの胸元に落とし、あたしは震えた声でそう言った。
「えー…誰もおらんで?」
返してくるタクの言葉に疑問を覚える。
「嘘やん…」
そう言われるままもう一度視線を送る先は何の異変もないままだった。
あれ?何で?
だって、確かに…確かに誰か居た。
「どーせアイツら違うん?」
「何でよっ、もうとっくに行ってるやん。おったとしても声掛けてくるやん」
「じゃー見間違えやって」
タクは何も思ってない様にそう言ったけど、あたしは見間違えなんかじゃないってそう思ってた。



