その明かりはタクが取り出した携帯。
徐々にタクがあたしの手の平に向けた瞬間、
「いややぁーっ!!」
あたしの叫んだ声が辺りを響かせた。
照らされた手の平が真っ赤に染まってる。
ベタベタとヌルヌルするのは何の誰の血なのかも分からない液体があたしを染めてた。
「どーしてん、お前。何処で切ってん?」
顔を思わず背けたあたしにタクはそう言う。
……切った?
何で?あたし傷みなんて何もないもん。
切った時に襲う痛々しさなんて何もなかったもん。
「…切ってなんかないもん」
「切ってへんだら血なんかでーへんやろ」
「せやけど違うもん!!柱見てよっ!!こんなに血なんてでーへんもん!!」
恐怖のあまりそう叫んでしまった。
だって、あたし…痛くないんやもん。
「つか、なんもないけど。多少、血がついとるだけ」
「嘘やん!!」
「見てみろよ」
視線を落とした目線をゆっくり上げ、柱を見ると何もなかった。
タクが言う通り多少の血痕。
じゃあ、何であんな柱に触れてた手がヌルっとしたん?
あたし、切ってないもん。
…誰の血なん?



