天使の瞳


「どーしたん?」

「どうしたちゃうやん!!タク、押さんといてよ!!」

「は?何で俺が押さなアカンの?つか、お前に腕掴まれてどー押すねん」

「…え?」


それもそうだ。

タクはあたしの隣にずっと居た。


じゃあ、…誰が?


恐る恐る振り返る。でも、だれも居ない…と同時に柱につけていた手を離そうとした時だった。


ヌルッと気持ち悪い感覚を手にあじわう。


「え、…何?いややっ、」


暗闇の中でそう声を吐きだす。

気持ち悪い、気持ち悪い。

ベタベタする…


何なん、これ。


「音羽、どーしてん?」

「手が…」

「手?」

「気持ち悪い。ベタベタする」

「は?何で?」

「何でってそんなん知らん」

「ちょっと待てよ」


辺りなんて真っ暗だ。

立ち止まった所為で、もう皆の姿さえ見えない。


その恐怖を感じた瞬間、パァっと少し明かりがでた。