天使の瞳


「不満って言うか、タクあたしの事置いて行きそうやもん」

「そんなんせーへんわ」

「本間?嘘ちゃうやんな?」

「おぅ」

「じゃあ、あたし先行くで」


千穂は先行く晃くんの所まで小走りで行き、その晃くんの腕をしっかりと掴んだ。


「おーい、拓斗行くぞー」


懐中電灯を灯す先輩はそう叫んだ。


「おー、行く行く」


“音羽、行くぞ”

付け加えるようにそう言ったタクはあたしに背を向けて歩きだした。

そのタクの背中を追いかける様にあたしは早歩きで足を進める。


「なー、タク?」

「うん?」

「ここって廃墟になってどれくらいなん?」

「10年くらいちゃう?」

「えー、そんなもんかなぁ…。めっちゃボロボロやん」

「けど一応肝試し有名スポットやて」

「そんなんどーでもいいわ」


今から入ろうとする所に、さっき話してた地蔵が目に着いた。


………亡くなった人の地蔵?


それだけで背筋がゾクッとする。

中に足を踏み入れると気持ち悪い暑さ。窓が全て閉まっている所為で息苦しさを感じた。