タクが車を止めた場所は無駄に広い駐車場。
その目の前におびえ立つのは何十年もの歴史が詰まった古い古い旅館だった。
この道の先に続く暗闇のトンネルが微かに見える。
チカチカと壊れかけの街灯がよりいっそう恐怖をあじあわせた。
「あ、もうおるやん」
エンジンを止めたタクはそう言って先に車から降りる。
それに続いて降りた晃くんと千穂。
だけど、あたしは降りれなかった。
車の中からデカイ旅館を見つめる。もう人さえ寄りついてないその旅館の周りは草が生えきっていて、旅館を囲んでいた。
マジで、無理だから。
気味悪いその旅館を見ていると、ガラっと開いたスライドドアの音でビクンと、身体が飛び跳ねた。
「音羽?」
そう言って顔を覗かせたのはタク。
「お前、ここにおる?」
続けてそう言ってきたタクに慌てて首を振った。
いつ帰って来るか分からないのに、こんな所で一人で居れるわけがない。
仕方なく降りると、タクの先輩であろう人達が女2人と男3人で居た。
「こんばんは」
大学生であろうか、女の先輩は微笑んで頭を軽く下げた。
「こんばんは」
同じく言葉を返すあたしに先輩はニコって微笑む。
表情からすると、別に何も怖くないって顔。皆を見る限り、楽しんでる感じだった。



