天使の瞳


「ほら、食うって。…んじゃあ、それで」


暫く経って注文したお好み焼きが運ばれてくると、それを皆で頬張った。

相当お腹が空いていたのか、タクは余裕で食べつくし、途中でいらないと言ったあたしの分まで全て食べた。

随分居座っていたのか、店を出た頃には薄暗く海辺の街灯と海の家の明かりが照らし出して居た。


「晃、タク、ご馳走さまー」

「ご馳走さま」


満腹を得た千穂はににこやかにそう言って、続けてあたしもお礼を言った。


「はいよ」


そう言ったタクはジーンズから煙草を取り出し火を点ける。その煙草を咥えたままタクは駐車場へと足を運ばせた。


「やっぱこー言う時、車ってええよなー」


一台の黒いワゴン車に近づくと、千穂は嬉しそうにそう言った。

4月に誕生日を迎えたタク。5月に誕生日を迎えた晃くん。

だから二人とも早々と免許を取っていた。


「うんそうやな。千穂って先月やったやろ?免許取らへんの?」


車に乗り込んだあたしは千穂に視線を送る。


「まだ、いいわ。取っても乗りそうにないし」

「まぁ…ね」


タクがエンジンを掛けたと同時にあたしは深くソファーに背を付けて眠りに入る時だった。

車が進む景色をジッと見つめてて、その違う景色に慌てて身体を起し前の運転席に居るタクの横に顔を出した。