「え?何で?」
「何でって、もしバレたらアンタまた停学やで」
「こんな所でバレへんわ」
「分からんやん。前だって、こんな所でーってな所でバレたんやから」
「アホか。それ俺違うわ!拓斗やろうが」
「どっちもどっちやけどな」
呆れた様にため息をついた千穂は顔を顰めたままパタパタとウチワを仰ぐ。
「なー、音羽まだか聞いて。ここ暑すぎ」
我慢が出来ないタクはベンチに深く座り込んであたしを見上げた。
少し陰になっていても暑さは込み上げる。
グッタリするタクを見たあたしは仕方なくドアを開けた。
「すみませーん。後、どれくらいですか?」
開けた瞬間、ヒヤっと冷たい空気に快楽になる。
いい匂いが充満する中、ザワザワと賑わってる店の奥から店員さんが慌てて姿を現した。
「あ、今丁度開いたんで片づけますね」
「あ、はい」
顔を引っ込めたあたしはその通りの言葉を皆に伝える。
丁度会計を済ませて出て来たお客さんと同時に、「お待たせしました」と店員の声が響いた。
待ってましたと言わんばかりにタクはダルそうに立ち上がりそそくさと中に入って行く。
その後に続いてあたし達も店内に入った。



